【第2回】「おなかがしくしくするんです…」
― 消化器?婦人科?“しくしく痛”の原因を探る ―
患者様
「先生、最近ずっとおなかがしくしく痛むんです。激痛ではないんですけど、なんとなく気になって…」
医師
「“しくしく痛む”という表現、よく伺います。痛みの場所やタイミング、他の症状によって、原因が異なることが多いんですよ。どのあたりが痛みますか?」
患者様
「下腹部の真ん中あたりです。特に生理前後に感じることが多いです。」
医師
「なるほど。生理周期に関連しているとなると、婦人科系の要因も考えられますね。消化器系の問題も含めて、詳しく見ていきましょう。」
◎ “しくしく痛”の主な原因とは?
下腹部の鈍い痛みには、以下のような原因が考えられます。
1. 消化器系の疾患
- 過敏性腸症候群(IBS)
ストレスや食生活の乱れが原因で、腹痛や下痢、便秘などの症状が現れます。 - 感染性腸炎
ウイルスや細菌による感染で、腹痛や下痢、発熱などの症状が出ます。 - 大腸憩室炎
大腸の壁にできた小さな袋(憩室)が炎症を起こし、痛みや発熱を伴います。 - 便秘症
便が溜まっていることにより腸の動きに伴う痛み(蠕動痛)を腹痛として感じることもあります。 - 大腸がん
腫瘍ができて便の通りが悪くなっている場合の症状のこともあります
2. 婦人科系の疾患
- 子宮内膜症:子宮内膜に似た組織が子宮外に存在し、炎症や痛みを引き起こします。
- 子宮筋腫:良性の腫瘍で、サイズや位置によっては痛みや圧迫感を感じることがあります。
- 卵巣嚢腫:卵巣に液体が溜まった袋状の構造ができ、破裂や捻転によって痛みを生じることがあります。
- 骨盤内炎症性疾患(PID):性感染症などが原因で、子宮や卵巣、卵管に炎症が広がる疾患です。
3. 泌尿器系の疾患
- 膀胱炎:細菌感染により膀胱が炎症を起こし、排尿時の痛みや頻尿、下腹部の不快感が現れます。
- 尿路結石:尿路に結石ができ、移動する際に激しい痛みを引き起こすことがあります。
◎痛みの性質と関連症状をチェック
痛みの性質や他の症状から、ある程度原因を推測することができます。
- 周期的な痛み:生理周期と関連している場合、婦人科系の疾患が疑われます。
- 食後やストレス時の痛み:消化器系の問題、特に過敏性腸症候群の可能性があります。
- 排尿時の痛みや頻尿:泌尿器系の疾患、特に膀胱炎が考えられます。
◎診断のための検査
「おなかがしくしくする」痛みの原因は多岐にわたるため、複数の臓器を対象に丁寧に検査を進めていきます。原因を絞ることで、適切な治療へとつなげることができます。
1. 腹部超音波検査(エコー)
特徴:ゼリーを塗って、お腹の表面から臓器の状態を観察する検査です。子宮・卵巣の腫れ(筋腫、嚢腫など)、腸の動き、ガスの溜まり具合、腹水の有無などを確認できます。婦人科受診に抵抗がある方でも、消化器内科でできる検査として有効です。
2. 血液検査
- 炎症の有無や感染症の兆候を調べます。
3. 尿検査
- 膀胱炎や尿路結石の有無を確認します。
4. 腹部レントゲン
お腹の中の空気(ガス)や便の位置を映し出せるため、腸にガスや便が過剰に溜まっていないかを視覚的にチェックできます。
5. 内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)
特徴:消化管の中を直接カメラで観察できる検査で、「慢性的なしくしく痛」が続く場合、機能的ではなく器質的な疾患(=目に見える病変)を見逃さないために重要です。
このように段階的に検査を進めることで、「なんとなくの痛み」が何に由来するのかを明らかにできます。患者さんの症状や希望に応じて、無理のないペースで検査を進めていくことが可能です。
◎まとめ:早めの受診が安心への第一歩
「おなかがしくしくする」という症状は、日常的によくあるものですが、放置すると重大な疾患のサインを見逃すことにもなりかねません。痛みが続く、または他の症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査と診断を受けることをおすすめします。