下痢

下痢とは

下痢とは、普段のお通じよりも柔らかくなった状態を指します。
下痢でご来院される方の年齢層はさまざまですが、例えば、朝や午前中に来院される方の中には、夜中にお腹が痛くてほとんど眠れず、一晩中トイレにいたという方や市販薬などで一時的に症状を和らいだがそれでも治らなかった方など患者様によって症状はバラバラです。下痢は早めに対処するほうが良い感染症や食中毒、またなんらかの病気の一症状である可能性もありますので早めにかかりつけの医師の診断を仰ぎ、適切な処置や治療を受けるように心がけましょう。

下痢の原因

下痢の原因はさまざまで、原因によって治し方が全く違います。
何が原因の下痢なのかをしっかりと見定め、適切な処置を行うことが重要です。
当院では、感染症などの器質性疾患の疑いがない場合、必要に応じて心療内科の薬やカウンセリングを併用することが有効だと考えています。
現在、自律神経を調節する薬が保険適用されており、比較的容易に症状の緩和が期待できます。代表的な病名としては、機能性ディスペプシアやIBS(過敏性腸症候群)などが挙げられます。

  • 食中毒や感染症

    食中毒と感染症の違いは、食中毒は飲食物から、感染症は人や動物から伝わることです。食中毒や感染症が原因の下痢の場合は、抗生物質が必要になりますので、お心当たりがある方はお早めに消化器内科をご受診ください。

  • 食物アレルギーや食物不耐症

    食物アレルギー、食物不耐症ともに特定の食品に対して体が拒否反応を起こすことをいいます。その一症状として下痢があります。

  • 心因性

    腸は❝第二の脳❞とも言われ、感情と深く関わりがあると言われています。腸の動きは自律神経(交感神経と副交感神経)が調節しているため、これらのバランスが崩れることで下痢・便秘が起こります。一般的には交感神経が優位な時は腸の動きは停滞し、副交感神経が優位な時には腸の動きが活発になります。そのためストレスやプレッシャーがかかったときには自律神経が乱れから腸が不調が起こりやすくグルグルとお腹が痛くなることがあります。

  • 炎症性腸疾患(IBD)

    主に潰瘍性大腸炎とクローン病を指します。潰瘍性大腸炎は主に粘膜が炎症で侵されるのが特徴で血便、粘血便、下痢あるいは血性下痢を呈することが多いです。軽症例では血便を伴わないが下痢がきっかけで見つかることもあり、重症化すれば水様性下痢と出血が混じった状態となることもあります。30代以下の成人に発症することが多いとされており、「昔から下痢なんです。」や、「肛門に出来物ができやすいです。」という問診をきっかけに大腸カメラをしてみると発見されることも当院では多く経験しています。

  • 薬の副作用

    必ずしもではありませんが、どんな薬にも副作用があります。特に抗生物質や脂質を下げる薬には下痢の報告があったり、抗がん剤治療中の方も下痢を起こすことがあるのも、薬の副作用と言えます。当院を下痢症状で来院された際にはお薬手帳の提示をお願いしたり、サプリメントの内服状況をお聞きすることがありますので、ご協力をお願いいたします。

  • 婦人科系疾患

    女性特有ですが、月経困難症や子宮内膜症など婦人科疾患に伴う慢性下痢症も存在します。
    問診での婦人科受診歴や治療歴が診断の助けになることがありますので、ご協力をお願いいたします。

プチコラム【その下痢の原因、もしかしたら牡蠣かも!?】

広島は牡蠣の名産地として知られていますが、その一方で、ノロウイルス感染者が多い地域でもあります。そのため、牡蠣を食べた方にはウイルス検査を行うことがあります。ただし、検査が保険適用となるのは65歳以上の方に限られますので、その点は予めご了承ください。

当院の診察と検査の流れ

  1. Step01

    問診

    当院では、問診を非常に重視しています。患者様にお伺いする情報は主に4つあります。

    1. 直近1週間の食事内容
      まず、過去1週間程度の食事内容をお伺いします。
      下痢の原因となる菌やウイルスには潜伏期間が異なるものがあり、食後すぐに症状が出る場合もあれば、3~4日経ってから発症することもあるからです。
    2. 周りに下痢の症状がある方がいるか
      感染症の中には、周囲の方から感染しているケースもあるため、周りに下痢の方がいたかどうかも確認しております。
    3. 若い頃から下痢を経験しているか
      若い頃から下痢の経験があるかどうかもお聞きします。長年下痢が続いて「自分はこういう体質なんだ」と思い込んでいる方の中には、実は潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)を抱えている可能性がある方もいます。また、当院の肛門科を受診された方で、「昔から下痢が続いていて、お尻がただれている」と感じていた方が、実際にはクローン病だったというケースもあります。
    4. 食習慣など生活習慣の変化について
      朝食を抜くのが当たり前など、食習慣にも大きく排便習慣は影響します。胃に食べ物が運ばれると「胃・結腸反射」と呼ばれる反射が起きて腸管の蠕動運動が起こるからです。 またまた香辛料を多くとる、油物(例えば、ラーメンの汁は全て飲み干します。など。)の摂取やある種のサプリメントなどにより下痢を引き起こすこともあります。

  2. Step02

    触診

    問診で得た情報を元に、触診を行います。

    ※必要であれば便の培養検査をさせていただきます
    触診の際、必要であれば肛門鏡を使用し、便をその場で採取させていただき培養検査を行います。培養は細菌しか検査ができないので、必要であればウイルス検査をいたします。

  3. Step03

    診断

    便培養検査にて下痢型大腸菌やウイルスなど症状の原因となる菌が検出された場合は、症状に応じて必要なお薬を処方させて頂く場合もあります。
    また、炎症性腸疾患を否定するためには専門医の大腸カメラを受けることをおすすめします。

下痢の対処法

注意点

  • 水分補給

    水分補給がとにかく重要です。下痢で脱水症が進行すると命に関わる可能性があります。自体で命に関わることはありませんが、脱水症特に感染症が原因の場合、体内から菌を排出するために下痢をすることはむしろ良いことです。そのため、脱水症を防ぐためにも、ポカリスエットなどのスポーツドリンクや電解質を含む飲み物を飲み、水分補給することが大切です。
    (ただし、高血圧や糖尿病など基礎疾患をお持ちの方は塩分や糖分過多になることもあり、過度な摂取には注意が必要です。

  • 食事

    当院ではお腹に優しい食事と表現しておりますが、お腹が痛いときに食べたくないと感じるものは食べない、ということを意識していただきたいです。やはり香辛料や揚げ物、アルコールなどお腹に刺激が強いものは腸の動きを活発にさせるため、それよりは豆腐やうどん、お粥など優しい食事を心がけてください。

  • 市販薬について

    市販薬を一度使用するのは問題ありませんが、症状が改善しない場合や発熱をともなう場合は食中毒や感染症の可能性があります。その際は抗生物質が必要となることもあるため、早めに病院を受診してください。

下痢を速攻で治すには

下痢を速攻で治すには専門医の受診をお勧めします。市販の下痢止めは一見治ったように感じるかもしれませんがおすすめはいたしません。病原性大腸菌などの感染性下痢は体が悪いものを排出しているサインであり、むしろ出し切った方が良いと考えています。ただし、脱水症状になる可能性があるため、水分補給はこまめに行ってください。また早く治したいのであれば、原因を明らかにすることが一番の近道です。治らない下痢にお困りの方はぜひ当院までお越しください。

よくある質問

Q
下痢がつらいです。止めていい?
A
下痢が続くと、次の腹痛がいつ襲ってくるか分からず、外出が難しくなります。
そのため、下痢を止めたいと考える患者様は多いでしょう。基本的には、体に悪いものは出した方が良いですが、どうしても止めたい場合は、まずは消化器内科に受診して、止めて良い下痢かどうかを判断しましょう。具体的なアドバイスは、患者様お一人お一人の症状に合わせてお伝えいたします。
Q
下痢が出きったのに残便感があります。なぜ?
A
下痢をした後、「もう出終わった」と思ったのに、まだ気持ち悪い・・となったりしますよね。これは、液体状の便が直腸(大腸の末端部)に残っていたり、その残りの便が直腸を刺激するために起こります。これを「排便反射」といいます。人間の体の仕組みとして、直腸に下痢や便が溜まっていると、お腹に違和感を感じるようになっています。下痢の便は水っぽいため、一度にすべてが出るわけではなく、どうしても便が残ってしまいます。そのため、「まだ便がある」と感じてしまうのです。こうした状況では、時間を待つしかありません。
Q
鈍痛が続きます・・・。どうしたらいい?
A
腸の痛みには”波”があります。ぜんどう運動なので、ギューっと締めつけられたときには痛みを感じ、フッとゆるんだときには楽になります。そのため、楽な瞬間がない場合は異常な可能性が高いので早く医療機関へ行き専門家に診てもらう必要があります。
Q
心配しなくていい下痢とは
A
緊張する場面、例えば通勤やプレゼンの前など緊張を感じた時に下痢の症状が出る患者様も一定数いらっしゃいます。これは習慣的なものであれば、体質の問題と考えられるため、特に心配はありません。しかし、普段は下痢をしないのに急に下痢をしたり、回数が増えたり、いつもと違う種類の下痢が出るといった違和感を感じた場合は、ストレス以外の原因が考えられるかもしれません。少しでも不安を感じる方は、ぜひ一度ご相談ください。

下痢でお悩みの方は当院まで

当院は日本大腸肛門病学会認定施設です。消化器内科・大腸肛門病および内視鏡の専門医がおり、下痢の原因についても幅広く対応できる高い専門性を持っています。そのため、下痢が単なる食事やストレスによるものなのか、それとも感染症や炎症性腸疾患(IBD)など、消化器の深刻な問題に関連しているのかを、診察や必要に応じた検査を通じて的確に判断することが可能です。

IBDは厚生労働省による難病医療費助成対象の公費助成の対象疾患です。当院は広島市が指定した医療機関(難病指定医)ですので、万が一診断された場合も安心して通院していただけます。
下痢の原因には、食事の不調和、感染症、ストレスや薬の副作用などさまざまな要因がありますが、大腸の炎症やクローン病、潰瘍性大腸炎といった重大な疾患が隠れている場合もあります。もし、下痢が続く場合や、便に血が混じるといった症状が見られた際には、自己判断せず、専門医による診察を受けることが大切です。下痢でお悩みの方は、ぜひ当院へお越しください。当院のご予約は、24時間いつでもWEBで簡単にお申し込みいただけます。ぜひご活用ください。

監修:中川外科胃腸科