対応可能な疾患

肛門出血

まず便培養を行い感染性腸炎の鑑別が必要です。

大腸からの出血の場合

大腸がん、慢性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、 感染症(カンピロバクター・サルモネラ・腸管出血性大腸炎・アメーバ赤痢)、 虚血性大腸炎、大腸ポリープ、大腸憩室症などありますが感染性大腸炎を否定するためには便培養が必要です。
そして大腸カメラ検査が必要ですのでご相談ください。

肛門疾患からの出血の場合

まず肛門指診・肛門鏡検査を行います。

  • 痔核(いぼ痔)

    内痔核は肛門指診で痛みの無い痔核です直腸内粘膜が怒張して硬便や下痢便の時にいきんで排便、長くトイレでしゃがんでいると出血します。
    外痔核も同様の原因ですが痛みを伴います。普通出血はありませんが血栓性外痔核が破れて出血することはあります。

  • 裂肛(切れ痔)

    硬便や下痢便をいきんで出して肛門の皮膚が裂けて出血と肛門痛を伴います。
    確実に治療をしておかなければ慢性化して手術が必要になります。

  • 直腸粘膜脱症候群

    いきんで排便をする習慣があり拭きすぎが原因になる事もあります。女性の肛門前方に出来ることが多いのですが、時に肛門直腸がんと鑑別が必要なこともあります。

肛門からの出血は排便習慣の悪い事、飲酒の多い時、妊娠出産、中腰の力仕事が原因になります。
出血があれば受診してください。

肛門腫脹

肛門部に腫脹を来す肛門疾患にはいぼ痔(脱出性内痔核Ⅲ度~Ⅳ度・外痔核)と肛門周囲膿瘍・痔瘻があります。

脱出性内痔核

内痔核はⅠ度からⅣ度まで分類されますが、脱出性内痔核はⅡ~Ⅳとなります。

  • Ⅰ度内痔核

    直腸内で腫脹しているもので脱出は無い、痛みの無い出血

  • Ⅱ度内痔核

    排便時に肛門外に脱出する内痔核ですが自然に肛門内に戻るもの

  • Ⅲ度内痔核

    排便時に肛門外に脱出し指で戻さないと自然には戻らないもの

  • Ⅳ度内痔核

    常に脱出している内痔核

  • かんとん痔核

    Ⅱ~Ⅲ度の内痔核が血流障害を起こし簡単には戻らず激痛を来したものです。

  • 外痔核

    肛門上皮に出来た外痔核は痛みを伴ういぼ痔です。血栓を作ると痛みの強い血栓性外痔核となります。普通出血はありません。

肛門周囲膿瘍・痔瘻

直腸と肛門上皮(肛門の筒)の境の部分に肛門小窩(陰窩)と言う窪みがあり肛門腺と言う管につながっていますが、ここが感染して膿が溜まって来ます。
下痢気味の若い男性に多いのですが、疲れ・飲酒することで更に悪化して強めの疼痛・発熱・膿瘍が出て、さらに触れれば痛い肛門周囲膿瘍になります。
筋肉の隙間から肛門深くに膿瘍が広がると排便時痛と高熱が出現します。
こじれないうちにご相談・受診してください。

血便

血便を認める疾患には痔疾患・直腸がん・炎症性腸疾患・感染性腸炎・大腸憩室出血・虚血性大腸炎などがあります。
黒色便の場合は血液が胃酸で酸化されコーヒーの残渣のようになります、上部消化管出血で胃出血・十二指腸潰瘍出血で黒色便になれば貧血が来ます。
血便があるからと『痔からの出血』と自己判断しないでご相談ください。

腹痛

腹痛には下記のごとく消化器疾患だけでなく心・血管疾患、婦人科疾患、泌尿器疾患もあり 緊急治療を必要とするもの、良性疾患・悪性疾患、外傷既往・既往症を頭に入れて考えなければならないので、患者様・ご家族は冷静に訴えることが診断の近道になります。

局在別の原因疾患

  • 右季肋部痛

    • 肺炎・膿胸・横隔膜下膿瘍
    • 急性肝炎
    • 胆のう(結石・がん・炎症)疾患
    • 十二指腸潰瘍
    • 尿管結石
  • 右季肋部痛

    • 心筋梗塞・大動脈瘤
    • 逆流性食道炎
    • 胃(潰瘍・がん・急性炎症)疾患
    • 膵臓(炎症・がん)
    • 胆道結石
    • 急性虫垂炎初期
  • 右季肋部痛

    • 横隔膜下膿瘍
    • 脾梗塞・脾破裂
    • 胃(潰瘍・がん・炎症)疾患
    • 膵臓(炎症・がん)
    • 尿管結石
  • 右季肋部痛

    • 大動脈解離・大動脈瘤
    • 胃腸炎・大腸炎・初期急性虫垂炎
    • 腸閉塞(イレウス)・腹膜炎・大腸がん
    • 尿閉(膀胱拡張)・前立腺炎
  • 右季肋部痛

    • 尿管結石
    • 急性大腸炎・憩室炎
    • 大腸がん
    • 炎症性腸疾患
    • 急性虫垂炎
    • 子宮附属器炎・卵巣捻転・子宮外妊娠
    • 鼠径ヘルニア
  • 右季肋部痛

    • 尿管結石
    • 過敏性腸症候群
    • 大腸がん
    • 虚血性大腸炎
    • 骨盤内炎症疾患
    • 鼠径ヘルニア

下痢

まず便培養を行い、感染性腸炎の鑑別が必要となります。
下痢は急性下痢症と慢性下痢症の二つに分けられます。

急性下痢症

急性下痢症の原因

急性下痢症には、感染性下痢症と非感染下痢症があります。

感染性下痢症

  • カンピロバクター菌
    • 鶏肉から感染、ペットが保菌している事もあります。
    • (潜伏期間2~5日)右結腸に小潰瘍を作る事もあります。重症の場合粘血便になります。
    • 感染後にギランバレー症候群、過敏性症候群発症もあります。
  • 病原性大腸菌
    • 牛肉・汚染食品から小腸・大腸に感染(潜伏期10時間~8日)
    • 180種類以上あります。
    • ベロ毒素を持った腸管出血性大腸菌(腸管病原菌O157など)は血液を破壊し、溶血性尿毒症候群を呈して重症化し致死率1~5%あります。
  • サルモネラ菌
    • 鶏・豚・牛の腸管や下水道の自然界に生息(潜伏期間12~72時間)。
    • 下痢・発熱・激しい腹痛となります。
    • 生卵は殻にヒビの入っていないものを食べる事、ペットに注意、ネズミ・ゴキブリが媒体になるので対策を実施します。
  • 腸炎ビブリオ菌
    • 寿司や刺身や一夜漬けの魚介類から感染します。(潜伏期間8~20時間)
    • 夏は生魚介類を買ったら早く水洗いすることが必要です。
    • 激しい腹痛、腐敗臭の水様便、脱水症状治療が必要になります。
  • ノロウイルス
    • 牡蠣など二枚貝から感染(潜伏期間1~2日)乾燥する冬に起きやすい食中毒です。
    • 嘔吐・下痢が出現しますが高熱は出ません。
    • 毒性は強くはありませんが、感染力は強いので免疫力の落ちた老人、老人施設などで集団発生することがあります。
    • 口から入ったノロウイルスは人の小腸の中でのみ増殖し長期管生存すし、発症後2~3週間は糞便中に排泄します。
    • 嘔吐物や便はマスクや使い捨て手袋で密封処理してください。
    • 200~1000ppm次亜塩酸ナトリウムによる消毒(作り方:ドアノブや手すり消毒は家庭用塩素系漂白剤10mlを水2.5ℓで薄める。嘔吐物や便は漂白剤10mlを水0.5ℓで薄める)。

非感染性下痢症

非感染性下痢症には、寝冷え、食べ過ぎ、飲みすぎ、食物アレルギーなどが原因として考えられます。

慢性下痢症

慢性下痢症の原因

2~3週間も続いたり繰り返すもので、血便や発熱の無いものが慢性下痢症です。

過敏性腸症候群(IBS)

数ヶ月以上続く腹痛と排便障害で生活の質の障害を呈し排便により症状が軽減します。
ストレスや疲労で交感神経のバランスが乱れたものと思われます。症状には下痢型・便秘型・混合型の3種類あります。
診断は便潜血陰性、血液検査で異常は無く、大腸カメラ検査で器質的疾患を否定します。
原因不明と言われて長く腹痛・排便障害で苦しんでおられる人は是非相談ください。

便秘

便秘は週に2~3回以下の排便回数減少で硬便となり、自覚症状を訴えるものを便秘症と言い、排便困難、残便感を訴える状態です。
まず大腸がんなどの器質性疾患の否定(これには大腸カメラ検査や肛門鏡検査が必要)、パーキンソン病など症候性便秘は病歴、鎮痛剤・抗コリン剤・神経剤など内服薬で薬物性便秘の診断が必要です。
便秘には運動不足などの生活習慣の改善、規則正しい食習慣、食事は線維の多いものを取り、適度な水分摂取が大切です、さらに排便の習慣改善。 そして薬物療法で腸管運動改善を行う事です。

薬物療法

  • 塩類下剤

    腸内で水分を腸内容に吸収させ軟化、蠕動運動亢進させます。
    酸化マグネシウムのMgは腎障害患者・高齢者には高マグネシウム血症に危険があります。

  • 上皮機能変容薬

    腸管内への腸液の分泌を増加させ柔軟化、排便亢進させます。

  • 胆汁酸トランスポーター阻害剤

    回腸での胆汁酸再吸収を阻害して蠕動運動亢進させます。

  • 経口腸管洗浄薬

    ポリエチレングリコール製剤で大腸カメラ検査前処置にも使います。

  • 刺激性下剤

    腸を直接刺激して蠕動運動亢進、頓服としての使用は良いが長期投与煤と依存性があります。

  • 漢方薬

    麻子仁丸、潤腸湯、大建中湯、乙字湯、桃核承気湯、調胃承気湯、 大黄甘草湯、通導散、大黄牡丹皮湯、三黄瀉心湯など。

便秘症のコントロール

以上の薬物組み合わせて下記のタイプの便秘症をコントロールします。

  • 通過遅延型

    大腸の運動低下によるもので下剤に消化管運動改善剤併用

  • 排便困難型

    便排出障害が直腸収縮力低下や骨盤底筋協調運動障害

  • 過敏性腸症候群便秘型

    大腸通過時間は正常で腸の蠕動運動亢進で腹痛を伴い水分が吸収され便秘となります。ストレス改善させるような生活に心がけ過敏性症候群の治療

便秘でお悩みの方はまず生活習慣、食事習慣、排便習慣を見直して是非ご相談ください。

痔疾患(3大痔疾患 痔核・裂肛・痔瘻)

痔疾患は四つ足哺乳動物が2本足で立ち上がった人間の宿命的な疾患です。
排便習慣の改善や食事の改善が基本です。

いぼ痔には、内痔核と外痔核があります。

内痔核と外痔核

  • 内痔核

    痛みの感じない直腸粘膜に出来たいぼ痔で原則痛くありません。残便感や肛門の腫脹、症状がひどくなると排便時などに肛門外に脱出して指で戻さなければ戻らなくなります。痛みの無い出血が特徴です。
    危険なことは『痛くない肛門出血だから内痔核だ』と自己判断して直腸がんを見過ごすことです。

  • 外痔核

    肛門上皮に出来たいぼ痔です。肛門上皮は皮膚ですから突然の激痛、押さえると痛みを伴ういぼ痔です。
    『いぼ痔が脱出した』と言っても触って痛いのはそもそも外に出来た外痔核で内痔核の脱出ではありません。

  • 裂肛

    硬い便や力んで排便することで肛門が切れた切れ痔です。普通は痛みを伴う肛門出血です。切れ痔がこじれると慢性裂肛となり肛門狭窄となれば手術も必要になります。『肛門が狭いから』と長い間便秘薬を使いながら苦しい思いをされている方もおられるはずです。是非受診してください。

  • 痔瘻

    肛門内の粘膜の肛門小窩というくぼみから感染して膿が溜まってとても痛い肛門周囲膿瘍を作り発熱する方もあります。肛門の外の皮膚に穴が開きトンネルが出来れば痔瘻の完成です、肛門の奥に膿が溜まれば高位膿瘍となり高熱が出現します、直ちに切開排膿が必要です。炎症が収まって根治手術も必要になります。

  • 刺激性下剤

    腸を直接刺激して蠕動運動亢進、頓服としての使用は良いですが長期投与煤と依存性があります。

いずれにしても肛門疾患はこじれない内に肛門科専門医受診してください。

胃がん

早期胃がんに特有の症状は無く、ヘリコバクターピロリ感染症が胃がんのリスク因子です。
もちろんヘヒコバクターピロリ陰性の人からもまれに胃がんはあります。
最近は胃がん検診や消化器症状から内視鏡検査をして発見されることが多いです。その他検診でヘリコバクターピロリ感染を指摘、あるいはABC検診でB群・C群の場合上部内視鏡検査生検病理検査結果で発見され確定診断されます。
早期胃がんであれば内視鏡的にESD治療で一括切除可能となりますが、がん細胞の悪性度が強いものや進行がんであれば外科手術となります。
内視鏡治療・手術治療になっても再発予防に術後にピロリ菌除菌が必要です。
早期胃がんの発見のためにも胃がん検診内視鏡検査を受けるべきです。
ご相談下さい。

食道がん

食道がんは初期には自覚症状はほとんどありません。検診や人間ドックの内視鏡検査やバリウム検査で早期発見されることが多いです。 進行すると飲食時の固形物のつかえ感、胸の違和感、胸背部痛、体重減少、咳嗽などが見られるようになります。

食道がんには組織型で2種類、扁平上皮がんと腺がんがあります。扁平上皮がんは放射線感受性があるので2種は治療法が変わります。病理診断は内視鏡検査で生検します。
食道扁平上皮がんのリスク因子は飲酒と喫煙です。食道腺がんのリスク因子は逆流性食道炎、バッレト上皮に喫煙の慢性炎症がリスクです。
扁平上皮がんは放射線治療、食道腺がんは早期のものは内視鏡治療が出来ますがまず内視鏡検査でその広がりを診断して、超音波内視鏡検査で食道がんの深さを調べます。
更にCTやMRIでリンパ節転移や周囲の広がりを、PET検査で他臓器転移の有無を検査するようになります。

食道がんと逆流性食道炎は症状もよく似ております、咽頭違和感、つかえ感のある方は早めにご相談ください。

膵臓がん

上腹部痛・腰背部痛が出現したら進行癌です。
膵臓癌は発生しても症状が出にくく早期発見は簡単ではありません。
進行してくると、腹痛、腹部膨満感、腰や背中の痛み、黄疸、食欲不振などになります。
一昔前は消化器内科の医師でも『膵臓癌になったら何も治療しない』と言う時代がありました。現在化学療法の進歩と手術の発展で治療は進歩しております。
喫煙や多飲酒はリスク因子になります。
また糖尿病、慢性膵炎、膵嚢胞、膵管内粘液性腫瘍(IPMN)は膵癌のリスク因子になります。
危険因子のある人は定期的に血液検査や超音波検査を受けて膵臓癌の疑われる場合はCT検査・MRI検査・ERCPやEUS-FNAと言う特殊内視鏡検査へと進めます。
危険因子のある人はご相談ください。

大腸がん

大腸がんは早期には自覚症状はほとんどありません。進行すると血便、粘血便、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、残便感、腹満感、腹痛、貧血、体重減少など自覚症状があります。一番怖いのは痔疾患と症状が似ているので『痔だ』と自己判断する事です。
診断には大腸カメラ検査が必要です。

2021年がん罹患数

男性

前立腺がん 95,400人
胃がん 90,000人
大腸がん 88,800人
肺がん 85,300人
肝臓がん 27,100人
膵臓がん 22,300人

女性

乳がん 94,400人
大腸がん 68,000人
肺がん 42,100人
胃がん 40,500人
子宮がん 28,600人
膵臓がん 21,600人

2021年のがん死亡数

肺がん 75,000人
大腸がん 53,000人
胃がん 42,000人
膵臓がん 37,600人
肝臓がん 23,900人

男性がん死亡数

肺がん 52,600人
大腸がん 28,500人
胃がん 27,200人
膵臓がん 18,620人
肝臓がん 15,600人

女性がん死亡数

大腸がん 25,400人
肺がん 22,300人
膵臓がん 19,000人
乳がん 15,700人
胃がん 14,800人

50歳を過ぎたら1度は大腸カメラ検査をしてください。

大腸ポリープ

大腸ポリープはほとんどが無症状でスクリーニング大腸カメラ検査時や便潜血陽性後の2次検診の大腸カメラ検査で発見されることがほとんどです。
大腸ポリープには腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープがあります。
腫瘍性ポリープはほとんどが腺腫性ポリープですが大きくなれば癌になります。
10mm以下のものは癌の確率3.3%、10㎜以上になると約3割です。
もちろん小さくてもデノボ癌(de novo癌)と呼ばれる比較的早期に癌になるポリープもあります。大腸右側に出来た鋸歯状ポリープは(過形成ポリープで本来ポリープ切除する必要ないもの)発がんする事が分かり盲腸・上行結腸の鋸歯状ポリープは切除が必要です。
大腸ポリープが癌性ポリープになっていればその広がり、深さを大腸カメラ検査で観察しながら内視鏡治療で簡単にポリープ切除できるか、内視鏡的粘膜切除術(EMR)できるか内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)出来るのか、外科手術すべきか判断します。
大腸粘膜は胃粘膜と違い非常に薄いので、安易に生検をすると生検した粘膜下層が線維化して内視鏡的治療が困難になりますので安易に『ポリープあれば取って下さい』とは言わない方が安全です。

便潜血陽性の方、排便が不規則な方、大腸癌家族歴のある方、糖尿病治療歴の長い方40歳過ぎたら一度大腸カメラ検査をお勧めします、是非ご相談下さい。

大腸憩室炎

無症状の大腸憩室は大腸カメラ検査、CT検査の時に偶然発見されます。
高齢者、男性に多く見られます。
大腸憩室炎を起こすと大出血下血で発症する事もあり、炎症が強く膿瘍を作って腹痛・発熱で発症することもあります。膿瘍が破れて穿孔・腹膜炎になる事もあります。
発熱・腹痛の発症にはCT検査、下血の場合は大腸カメラ検査で出血源を確認クリップ止血しますが、出血源不明の大出血の場合は血管造影で出血部位を同定し動脈塞栓術で止血する事もあります。
穿孔・腹膜炎を起こしていれば緊急大腸切除術にもなります。

大腸憩室症のある方は普段から暴飲暴食を控えむやみに鎮痛剤内服しないことです。大腸憩室症のある方が便潜血陽性であれば大腸カメラ検査を相談してください。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

下痢、腹痛、粘血便が慢性に続く疾患です。これらの症状に関節炎、皮疹、口内炎など併存することもあります。第一に大腸感染症との鑑別が必要ですが大腸カメラ検査で診断します。

  • 潰瘍性大腸炎

    大腸に特有の疾患ですが典型的な病変は直腸から連続的に、全周性、びまん性に粘膜に活動性炎症を呈する疾患です。
    怖いのは大量出血をして緊急手術が必要になる事もあります。長期間炎症が持続することで大腸癌が多発発生する事もあります。
    完全治癒することは無く、薬でコントロールして活動期から寛解維持して行くことです。

  • クローン病

    潰瘍性大腸炎と違い口から肛門まですべての消化管に炎症を引き起こす可能性があります。
    また10~20歳代に発症することが多く栄養障害、体重減少も引き起こします。潰瘍は深く腸管穿孔を来したり腸管狭窄を来すこともあります。
    痔瘻や裂肛の言った肛門病変で発見されることも多いクローン病です。
    上部内視鏡・下部内視鏡検査で病理診断します。

炎症性腸疾患は癌と違い治療しながら経過観察しながら確定診断することも多いです。
また確定診断して治療していても粘膜寛解しているのか、癌の発生はないのか、定期的な内視鏡検査が必要です。
是非継続受診してください。

虚血性大腸炎

突然の激しい腹痛と硬便と共に血便、その後に粘血下痢症状になります。
『意識を失いそうな腹痛だった』と訴えられる人もいます。
腹部超音波検査で下行結腸・S状結腸壁肥厚を認めます。緊急大腸カメラ検査で粘膜の片側性びらん出血・浮腫を認めます。
大腸に血流障害を生じて起きたものですが一過性のものが大多数で便秘が発症の一因ですが、血流障害の程度により大腸狭窄を来すものもあります。
高血圧・糖尿病・高脂血症で動脈硬化が原因の場合は重症化することもあります。
診断は大腸カメラ検査です。
激しい腹痛と血便があれが直ぐに受診してください。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃潰瘍・十二指腸潰瘍は胃粘膜・十二指腸粘膜が胃酸や薬物により傷つき潰瘍を呈した状態で穿孔することもあります。
食後に痛みの出やすい胃潰瘍、空腹時に痛みやすい十二指腸潰瘍ですが薬物による出血性潰瘍では痛みが少なく黒色便で気が付く事もあります。
原因はピロリ菌感染症、鎮痛剤、抗血小板剤、ストレスなどです。
ピロリ菌を除菌することで、また胃酸抑制剤PPIで胃潰瘍・十二指腸潰瘍は随分減少しています。
高齢化に伴い循環器疾患の増加で抗血小板剤内服の患者様が増加してリスク因子増加しています。
またステロイド内服患者もリスク因子になります。
抗血小板剤・ステロイド投与患者様にはPPI予防投与も必要であるが、そんな患者様に、腰痛・関節痛で鎮痛剤投与される機会も増えて出血性潰瘍が出現することがあります。
多くは上部内視鏡検査で診断し出血性潰瘍も内視鏡治療します。

ヘリコバクター感染症

ヘリコバクターピロリ感染症は免疫力の弱い5歳までの幼少期に感染する感染症です。
以前衛生環境の悪い時代は「井戸水から」など言われておりましたが、今はピロリ感染のお爺ちゃん・おばあちゃん・両親からの口移しで食べ物を与えることによる経口感染です。
ピロリ菌は胃酸分泌する胃の粘膜にアンモニアを出しながら胃粘膜に生存して胃粘膜に障害を与えて胃潰瘍・胃癌の原因になります。
胃潰瘍の治療にはもちろん除菌が必要です。除菌は胃がん発生を予防するのが目的です。
検診で『慢性胃炎』『ヘリコバクター感染症』と言われた場合、現在慢性胃炎で胃癌でないことを内視鏡検査で診断の上で除菌治療を行います。
除菌後の胃粘膜は未感染の胃粘膜とは違い粘膜萎縮(慢性萎縮性胃炎)があり、除菌後も定期的に内視鏡検査が必要です。
上部内視鏡検査をして除菌治療を受けるように相談してください。

逆流性食道炎

胸やけや呑酸症状のある胃食道逆流症のうち、内視鏡検査で粘膜損傷のあるものをびらん性GERD(逆流性食道炎)とびらんを認めない非びらん性GERDをNERDと区別しております。
NERDの方がGERDより治療が簡単とは限りません。
胸やけ・呑酸・慢性咳嗽・咽頭違和感・咽頭痛・非心臓性胸部痛などの症状があり耳鼻咽喉科や循環器科から紹介されることもあります。
診断は上部内視鏡検査ですが胃酸の逆流以外に食道運動障害、心因的要因もあります。
胸やけ・呑酸・咽頭つかえ感・胃部痛があればご相談下さい。

胆石症

胆石症は無症状で検診時に見つかることが多いですが、症状が無ければ経過観察で良いです。
胆管に感染を起こして右季肋部痛・黄疸・発熱を来してきます。炎症が強くなると敗血症や意識障害を起こすこともあるので早急に医療機関受診してください早期に胆管ドレナージが必要な事もあります。
胆石は胆汁に含まれる成分が結晶化して固まることで発生し成分によってコレステロール結石とビリルビンカルシウム石、黒色石に分けられます。
コレステロール結石は胆汁のコレステロール濃度が高くなることで発生、ビリルビンカルシウム石は胆汁の感染が原因で発生、黒色石の発生原因は不明です。
胆石があると暴飲暴食・高脂肪食後に突発する右季肋部痛、右背部痛、右肩放散痛が出現し腹部超音波検査で診断されます。
検診で胆石症を診断されたら一度ご相談下さい。

胆のう炎・胆管炎

胆のう炎

胆のうに炎症が起きて胆のうが腫れて右上腹部痛がだんだん強くなり激痛・発熱出現してきます。
胆のう結石がある人の胆のう管(胆のう出口の管)に石が詰まって炎症を起こす事がほとんどです。腹部超音波検査(エコー検査)と血液検査で診断されます。
胆のう石を伴わない胆のう炎は糖尿病のコントロールの悪い場合もありますが、胆管癌など悪性疾患が隠れていることがあるので要注意です。
胆のう炎は炎症が強くなると敗血症や意識障害を起こすことがあるので早急に医療機関受診が必要です。早期手術や胆管ドレナージが必要になる事もあります。
右季肋部痛があればまず腹部超音波検査ご相談下さい。

胆管炎

腹痛、特に右心窩部痛・黄疸・発熱症状です。
肝臓から胆汁が流れる管が詰まる事により胆汁うっ滞、逆行性感染により胆管炎となります。胆管閉塞のために黄疸が出現、敗血症にもなりやすいので緊急を要します。
胆管に感染を起こして右季肋部痛・黄疸・発熱を来してきます。炎症が強くなると敗血症や意識障害を起こすことがあるので早急に医療機関受診してください。早期に胆管ドレナージが必要な事もあります。
多くは結石による閉塞ですが10~30%悪性腫瘍もあります。
腹部超音波検査で胆管拡張と血液検査、さらにCT・MRI検査で精査します。
緊急ドレナージ治療、原因により治療方針検討となります。
上腹部痛・黄疸が出ればまず腹部超音波検査のご相談下さい。

肝炎

肝炎とは、何らかの原因で肝臓に炎症を生じた状態で、原因はウイルス、アルコール、非アルコール性肝炎、自己免疫、薬物など様々です。
初期では特別な症状はありませんが放置しておくと肝硬変や肝がんに進行するものもあります。
倦怠感で自覚することもありますが、検診で肝障害が指摘されたら自己判断せず、まず血液検査、超音波検査のうえで肝臓専門医のご紹介も可能です。